‘こころにひびく詩’ カテゴリーのアーカイブ

詩をひとつ高階杞一「答は空」

2016/06/02
   答は空

 

こどもと散歩しながら

聞いてみる

ねえ

この世で一番お金持ちは誰だか知ってる?

こどもは首をかしげてぼくを見る

ぼくは得意げに言う

答は空

見てごらん

あんなに立派なな太陽や

白いきれいな雲を持っている

夜には月や星まで出してくる

どんなお金持ちもあれは買えない

どう、すごいだろ?

 

五月のよく晴れた朝

もしもぼくにこどもがいたら

こんな話をするのになあ

と思いながら

犬といっしょに

若葉の美しい道を歩いていました

犬はぼくを引っぱり

先へ先へと急ぎますが

人間のぼくはそんなに速くは進めません

歩くことに

疲れて 立ち止まったり

時に振り返ったり

 

そんなぼくに

さっき

立ち止まったところから

今も動かずにいるこどもの声が

明るく

ひびいてきます

 

空ってすごいね

空ってすごいね お父さん

高階杞一「いつか別れの日のために」(澪標)から

 

母が亡くなって先日、四十九日の墓参りをすませた。今年の春は梅も櫻も藤も、もののみごとに花をつけ、おととし植えたぼたんは、はじめて花ひらいた。シャクヤクもたくさんのつぼみをふくらませている。

われもわれもいうせちがらい時勢のなかで、ときどき高階杞一の詩にふれる。

ぼたん

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