吉野弘哀悼
きのう友人からのメールで吉野弘が亡くなったことを知った。今朝の新聞に87歳で亡くなった吉野弘を悼む記事が載っている。
大好きな詩人がまたひとりこの世から去っていく。たくさんのすぐれた人の胸を打つ詩をのこして。
吉野弘の詩は、ごくふつうの人々のくらしの何気なさの中にひそむ断片を深い洞察と愛情でくっきりと浮かび上がらせる。その透明なやさしさは東北人の眼差しであり鋭さでもあろう。詩は人なり。「奈々子に」を。全文は長いので好きなフレーズだけ。
「奈々子に」から
唐突だが/奈々子/お父さんは お前に/多くを期待しないだろう。/ひとが/ほかからの期待に応えようとして/どんなに/自分を駄目にしてしまうか/お父さんは はっきり/知ってしまったから。// お父さんが/お前にあげたいものは/健康と/自分を愛する心だ。//ひとが/ひとでなくなるのは/自分を愛することをやめるときだ。//自分を愛することをやめるとき/ひとは/他人を愛することをやめ/世界を見失ってしまう。//自分があるとき/他人があり/世界がある。/・・・・
お前にあげたいものは/香りのよい健康と/かちとるにむずかしく/はぐくむにむずかしい/自分を愛する心だ。 「消息」より